ストロベリー・ムーン

名を、アイロンと言った。

「ストロベリー・ムーン」


生まれつき、顔にアザがあった。

それは子供の頃から変わらない大きさで顔の半分をおおっていた。 アザは丁度、アイロンを強く、押し付けたような形をしていた。

だから、なんとなく、自分の名前を口に出すのと同時に声にならない声で、「アイロン、」と呼んでいたのだ。

(水族館で見た、岩窟に潜む奇妙な格好をした魚と、自分を重ねていた。)


それは少し、自分から角度を持った所から音、という音もなく、しかし、確かな匂いを持ってこちらにやって来た。

アイロンは何のことかも分からず、けれど、それは確かにアイロンの目を見つめていた。          

(あぁ、あの、さかなが、)

指先に、赤いものが見えた。


(そうか、今夜は月のやけに赤い、)


ストロベリー・ムーンの夜だった。

花ケモノ

花のようにわらっては ケモノのように命を繰り返す

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