「快男子の姉と兄、そして藤沢マナと快男子」

「どうしてお前は自分の弟をそんなに毛嫌いするわけ?いっつも藤沢君の肩ばっか持ってるけど、あのな、一応言っておくけど藤沢、君!だからね。女の子じゃないんだからさ。・・・まぁ、あんまり恵まれてる訳じゃないみたいだけどだからってさ。あんなに良い奴そんなにいないのも分かるけどお前の弟だって色々大変だったんだからもうちょっとやさしくしてやれよ。」快男子の兄である。父親の製薬会社勤めのサラリーマンで営業をしている。快男子の兄の上には姉がいて彼女はまったく別の会社でOLをしている。この二人は似たもの同士で常に快男子の予測範囲の中にいない人種である。やはり二人共眉目は秀麗であった。快男子にはもう一人彼の下に妹がいる。上の二人と下の二人、それぞれに違った眉目の秀麗さで二人ずつが似ている。性格は快男子とその下の妹は例に順じず、妹に至っては快男子の事故以来自分の部屋から出て来ることがめっきり無くなった。人目を嫌い、深夜こっそり起き出して来る程度であった。しかし姉は例外で、彼女だけは自由に妹の部屋へ出入りを許された。快男子は薬剤師を目指して大学に入学していた。大学の近くのマンションで一人で暮らしている。藤沢マナは高校2年になっていた。快男子が大学に入学して夏休みの半月目、二人は別れを決意して、快男子が実家へ帰ってきた時この姉と兄二人は事情を知らず、しかし快男子を見た瞬間にすべてを察知した。二人別々に快男子に会って、それぞれ少し会話を、快男子の態度に何ら以前と変わりの無い所がいたく種種の現在の快男子の、主に行動を二人に察知させたのであった。とにかく、再開した瞬間二人が口にした言葉は同じで、以下の通りである。「おい、お前くさいぞ。いや、実際にじゃない。」「あんた何してんのよ。くさいわよ。へんな意味じゃないからね。実際にじゃないってこと。」つまり快男子から女のにおいがするというのであった。聞くところによれば、快男子はいつも二人には容易く白状できた。夏休みの初日に藤沢マナと会おうと彼の家を訪ねた快男子は藤沢マナの機嫌を損ね、修復不可能とさとった。そこで幾日かかけてから別れを切り出し、つまりほぼ一方的に相手を捨てたような状態になったと。藤沢マナはすがる風でもなく最後はあっけに取られるほど冷たい対応で送り出してくれたらしい。それから快男子が快男子らしくフラフラ歩いていると調度女性に誘われたのでついて行き、後はよく知らない人かまったく知らない人とその時限りでついて行ってそのまま別れてという日々だったらしい。そして家族のだれも感知しない隙に又快男子はおそらく大学の方、自分のマンションへ帰って行った?のであった。大学の成績表を置いていったけれども、それも相も変わらずすごく良いわけではないけれど、そんなに心配が必要でもなさそうな物だった。あいつはピンチな時程妙な弟気を出してすさまじいバランス感覚で何事も平穏に過ごす事が出来るんだと姉と兄は今会議の真っ只中である。妹は相変わらず部屋から出ない。「あんたね、知ってる?アイツはあぁやって今の今までのほほんと見せるフリだけを磨いてきちゃったのよ。それがいつもアイツをわるい方へ押し込むわけじゃない。何回やっても直さないどころかだんだん酷くなってなってさ、バカも程々って言葉知ってんのかしら。」「もうちょっとお前がやさしくしてやんないとアイツだってここに居づらいんだよ。この一件でせっかくなんとか持ち直してきたものもパァかもしんないんだぜ。まぁ、なんだ。父さんとの事だけどさ。それをお前、姉ちゃんのお前がそんなに藤沢君がかわいそうだって言ったらアイツもっとヤベェぞ。それにお前女のくせにアイツの犠牲者に対してどう思うわけ?」姉は手元のグラスを一口あおってから言った。仕事帰りで二人共くたくたで、妙に気が張って興奮気味であった。「あんたはバカだねぇ、女の方はどうせアイツの事踏みしだいてつまり次への気分転換とか、気分スイッチとしか思ってないんだからさ。アイツあんなに気だけは小さくて悪くなんて出来るわけないじゃん。どうせ声かけられたらかけられただけついて行ってるだけでしょ。アイツなんてあと何年かしたら鼻も引っ掛けられなくなるんだよ。顔だからね。お面と一緒だバカなやつ。私たちは結局、勤労青年が落ち着いたりすんのよ。そのうち藤沢君に泣きを見るのはアイツなんだから。もしそうなったらどうすんの、再起できるか私と賭ける?」姉は真面目に弟をけしかけた。「アイツはいつも人の気持ちとか心を生はぎにしてその女の子たちじゃんくてね、他のいろんな人たちのちょっと大事に持ってるものを、生はぎしてさらけさせてさ、ちょっとの間自分のポケットに入れとくくせにすぐ持ちきれなくなって相手の方からすり抜けてくの顔に出さないで泣きべそかいてみてんのよ。だって自分から生はぎにするわけじゃないんだから分かんないのよ。相手がどうして自分につらく当たるのか。まるで踏みつけにされたみたいな顔しちゃってさ。だから父さんだって仕方なく子供みたいにするしかなかったんじゃないの。」姉はとまらない。又一口あおって話し始めた。「それで最大のアイツのバカはね、最近よ、最近。藤沢君におまえは落ちてるもんならなんでも拾う癖がある。って言われたって。ちょっとうれしそうに言っちゃってんのよ。どうしようもない懐柔だって言われちゃったって。バカだねぇ、本当にアイツは。藤沢君と会ってから今の今まで、今でさえもだよ、アイツの懐にはポケットには藤沢君しか入ってないのに本人が気がついてないんだもん。どうせ自分でどんどん大きくしちゃって入りきらなくてあふれちゃったんでしょう。藤沢君には分かんないと思うよ。アイツの本当に良いところはさ。本当は良い子なんだよ。あの子はさ。お面がじゃまなんだよな。まったくさ。」

「だってしょうがないだろ。おれは何も知らされずにとつぜん空から降ってきたみたいにお前が目の前にいてさ。おれは何も知らなかったんだぜ。こんな風にだれかに、自分の気持ちやなんかを、それも全部、きっと張り裂けそうなまま生きてくんだと思ってさ。その時たとえおまえがいなくてもね。」藤沢マナは自分が言った言葉を思い出してから、それを何度も心の中だけで復唱していた。こうしてれば、あんまりつらいなんて感じないもんだよ。快男子は藤沢マナに教えてもらった事を何度も繰り返し頭に浮かべていた。「まるで自分の血液みたいにマナが、身体にあるような気がしたんだよ。だけどそれに実体が無いなんてどうして俺は何かを、どこにマナを求めようかと思った。」快男子は藤沢マナに今は言えなくなった言葉を、記憶を頼りに再生した藤沢マナと会話するように幾度も頭で、心はつかいたくなかったから、繰り返していた。「ただ俺はね、マナ。お前と一緒にいたかったんだよ。そして今、それが言えなかったら、自分がダメになると思って、それがどんなに俺の、たぶん一番俺が大切にしている俺だけのものを、脅かすかなんてお前にはわかんないだろ。お前はいつも俺のためみたいなフリしてさ、結局何も自分の思い通りになんてさせないんだ。」「わかってないな。おれは今の今までおまえが知らないとこで生きてたんだぜ。おまえになんかたえられっこないんだ。どうせおまえは、その懐から、おれを取りこぼす事になるんだぜ。おまえは自分の人生生きた方が、ずっとうんと幸せだって、気がつくんだよ。おれの思い通りのおまえなんて、ぜったいうまく行きっこないんだよ。おまえの知ってること、おれが知らないそれはたくさんあるけど、おまえが今言おうとしてるのは、おれのよく知ってることだ。今はちがくても、この先たくさん知ることになるんだ。そいでおまえが苦しんだら、おれは離れていくことを、おれは知ってる。」快男子は記憶を頼りに藤沢マナに喋らせた。きっとお前はそう言うよ。「俺は、マナができるだけいつも俺の近くにいて、俺の、俺に出来るめいいっぱいのたぶんお前にとってあたたかいものを、マナが求めてくれたら、それにいつも俺はこたえていられたら、それだけで俺はもう十分なんだっていう事を、お前は知らないね。そしてそれ以外の事をもう考えたり思ったりする俺を俺は持ち合わせてない事も、お前は知らない。」

「どうして人間っていうのはさ、ちょっと先とか、もしかしてずいぶん先か。それか、昔の自分の人生を生きようとばかりするんだろうね。後から思い出したらさ、今こんなにちぎれそうなおれだって、たったの一瞬にしかすぎないのに。いつもそうだったもん。どうしておれはいつも、今、目の前におまえがいるのに、後や先を、いいや、先を見てばっかしいるんだろう。そしてこまったことに、そこにおまえがいないなんてことが、もう考えきらなくなってきてるよ。」

言葉はいつも、花みたいに咲くくせに、それはもうここにはない花だったりする。だけどあんまりにもきれいで、ずっと胸に咲いててほしくなるんだ。まるで枯れない花みたいだ。その事を、その花は知らない。自分の知らないところでだれかの枯れないきれいな花になってるなんて、あんまりじゃないか。だけど、ふいにその花は、胸いっぱいに、胸を突き破ってきそうな程咲きたがったりする。もうここにはない花なのに、どうして人はそれを咲かせることができるんんだろうね。それは只、おまえがふれたものすべてが、おれにとって、やさしさ、あるいはうつくしさをもつだけだからだ。それがどんな思いをもたらすかなんて、おれはだれにもわかってなんてほしくないんだ。

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